労災保険≪初級編≫
費用徴収というリスク(未加入のリスク)
保険というのは本来、保険料を支払って加入し、事故が起こったときに給付が受けられるものです。労災保険も保険の一つですが、前述したように一般の保険とは取り扱いが異なります。
労災保険は、社員を保護するためのものですから、会社が加入手続きを行っていなくても社員は保険給付を受けることができます。この場合、会社は遡って保険料を徴収され、さらに(社員が)労災保険から給付を受けた金額の100%または40%が徴収されることになります。
費用徴収が適用されるのは、会社が「故意」または「重大な過失」により加入手続きを行わなかった場合となります。
○「故意」に手続きを行わなかった場合
加入手続きについて行政機関から指導を受けたにもかかわらず、手続きを行わない期間中に労災事故が発生した場合は、支給された保険給付額の100%が費用徴収されます。
○「重大な過失」により手続きを行わなかった場合
費用徴収例加入手続きについて行政機関から指導を受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続きを行わない期間中に労災事故が発生した場合は、支給された保険給付額の40%が費用徴収されます。
次のようなケースで費用徴収がいくらになるか計算してみます。
A社は、今まで労災事故がなく、保険料を負担したくないため、労災保険の加入手続きを行っていませんでした。ところが、先日社員の1人が労災事故で死亡し、労災保険から遺族に対し、遺族補償一時金が支給されました。なお、死亡した社員の月給は約30万円(給付基礎日額は10,000円)とします。
●「故意」と認定された場合
遺族補償一時金=給付基礎日額10,000円×1,000日分=1,000万円
費用徴収額=1,000万円×100%=1,000万円
●「重大な過失」と認定された場合
遺族補償一時金=給付基礎日額10,000円×1,000日分=1,000万円
費用徴収額=1,000万円×40%=400万円
1,000万円も400万円も、どちらも大きな金額ですね。これに加えて、2年分の保険料や追徴金が請求されてしまいます。費用徴収というリスクをとっても得られるリターンは何もないのですから、加入手続きはきちんと行っておきたいものです。