労災保険≪初級編≫
損害賠償との調整
社員が労災に遭ってケガをしたり病気になったときは、労災保険からさまざまな給付が受けられます。
ただ、その労災の原因によっては、会社が被災した社員や遺族から民事上の損害賠償を請求されることもあります。このような場合、被災した社員や遺族は、労災保険の給付と、民事損害賠償として支払われる損害賠償金を重複して受取ることはできません。同じ損害に対して2重にてん補した場合、実際の損害を上回ることも考えられますし、会社からしてみれば「じゃ、何のために毎年労働保険料を支払っているのか?」ということにもなります。
損害賠償金が先に支払われた場合には、労災保険の給付が支給調整(減額)されることになります。ただし、調整されるのは損害賠償の損害項目に対応する労災保険の給付です。
つまり、どういうことかというと、精神的苦痛による慰謝料を支払っても労災保険の給付が支給調整(減額)されることはありません。慰謝料に対応する労災保険給付がないからです。見舞金など損害賠償金の性格を持たないものも同様です。
最近では、被災した社員や遺族から損害賠償請求をされるケースが増えており、賠償額も高額なものになっています。労災保険は万能ではないので、慰謝料までカバーしているわけではありません。労災事故を起こさないためにも、まずは安全管理体制を整えておく必要があります。