労災保険≪初級編≫
もう一つの労災…「通勤災害」
一般的には仕事上のけが・病気を労働災害、略して労災と呼ぶことが多いようですが、厳密にいうと、これらは業務災害に分類されます。というのは、労災にはもうひとつ、通勤災害があるからです。つまり労働災害というのは、これら2種類を合わせた名称なのです。いずれも労災保険の補償対象ですが、給付内容などに若干の違いがあります。
労災保険での「通勤」とは、就業に関し、移動を合理的な経路、方法により行うことをいい、業務の性質を除くものです。
- ①就業に関していること
- 仕事をするために会社へ行くこと、そして仕事が終わって家に帰ることです。休みの日に、仕事以外の用事で会社へ行っても「通勤」にはなりません。
- ②合理的な経路・方法
- ・合理的な経路
- 通勤のために通常利用する経路であれば、複数あっても「合理的な経路」になります。また、道路工事などによって、仕方なく迂回する場合にも、「合理的な経路」と認められます。
- ・合理的な方法
- 鉄道やバスなどの公共交通機関の利用、自動車、自転車の利用及び徒歩などです。これらの方法であれば、いつも利用しているかどうかにかかわらず「合理的な方法」と認められます。
- ③業務の性質を除くもの
- 前述したように、業務の性質が認められるものは、業務災害になるからです。
法改正により平成18年から次の移動についても労災保険給付の対象となる「通勤」とされています。
- ①複数事業者の事業場間移動
- 2か所の事業場で働く労働者が、1つ目の就業場所で業務を終え、2つ目の就業場所へ向かう途中に災害にあった場合、通勤災害となります。
- ②単身赴任者の住居間移動
- 単身赴任者が、赴任先住居と帰省先住居との間を移動している途中に災害にあった場合、通勤災害となります。ただし、その移動の実情を踏まえ、赴任先住居からの帰省先住居への移動については、勤務美の当日またはその翌日に行われるもの、帰省先住居から赴任先住居への移動については、勤務日の当日またはその前日に行われるものが、通勤災害の対象とされています。
このほか、通勤の途中で逸脱・中断した場合には、逸脱・中断の間とその後の移動は「通勤」にはなりません。ただし、「逸脱・中断」が日常生活上必要な日用品の購入、病院や診療所での治療など、一定の行為については、行為中を除いて、合理的な経路に戻った後は再び「通勤」と認められます。