小千谷の社会保険労務士

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代休と休日の振替の違い

社労士の勉強を始める以前、本屋さんで何気なく手に取った本に代休と振替休日の違いが書いてあり、「そうだったんだ」と感心すると同時に社労士という職業に興味を持った一つのきっかけとなりました。

職場では同義語として使われることもあるかもしれませんが、労務管理上は明確に区別されます。簡単にいいますと、代休の付与の場合には,割増賃金の支払が必要ですが,休日の振替は,あらかじめ休日を移動させることになりますので,割増賃金の支払は必要ありません。

休日とは  労働基準法では,「使用者は,労働者に対して,毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。」と定めています(第35条第1項)。休日とは,労働契約によってあらかじめ定められた,労働義務の生じない日をいいます。原則として,午前0時から午後12時までをいい,継続した24時間であれば足りるというものではありません。

法定休日と法定外休日  

労基法で定める「週1回の休日」は,最低基準ですから,週休2日制など,これを超える休日を設けることは当然に可能です。法の求める最低基準の休日を「法定休日」,これを超える休日は「法定外休日」と呼ばれています。週に2日以上休みがある場合は,どれが法定休日に当たるかを就業規則などによって明確にしておくことが望ましいとされています(特に平成22年4月以降は定める必要があります)。
 法的には,「法定休日」に労働させた場合には35%の割増賃金を支払わなければなりませんが,「法定外休日」の労働に対しては,週の法定労働時間を超える部分に25%の割増賃金を支払えば足りるとされています。しかし,実際の取り扱いは,法定外休日に対しても35%の割増賃金を支払うケースが多いようです。

代休とは

代休とは,労働者を休日に労働させ,その代わりに後日,代わりの休日を与える(別の日の労働義務を免除する)もので,「代わりに与える休日」をあらかじめ指定しないものをいいます。別の日の労働義務を免除したとしても,あらかじめ休日が振り替えられていない以上は,休日の変更はなされていないため,労働を行った日は,休日であることに変わりはなく,したがって,三六協定と休日割増賃金の支払が必要です。

振替休日とは

あらかじめ他の労働日を休日と指定した上で,本来は休日と定められていた日に労働者を労働させることを「休日の振替」といいます。休日の振替が行われると,元の休日は労働日となる一方で,振替休日は労働義務のない日として,休日と取り扱われます。したがって,元の休日における労働は,休日労働とはならず,三六協定と休日割増賃金の支払は,必要ありません。ただし,休日の振替によって週の法定労働時間を超えることとなった場合は,三六協定や時間外割増賃金は必要です。休日の振替の手続、休日の振替を行うためには,就業規則に「業務上の必要がある場合には,休日を振り替えることができる。」などといった,休日の振替についての根拠を有することが必要です。

特定された休日を振り替えるためには,就業規則において振り替えることができる旨の規定を設け,休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定しておかなければなりません(昭23.4.19 基収1397号,昭63.3.14基発150号)。

就業規則の規定に基づいて振替休日を命じられた場合には,元の休日における労働に対しては,休日割増賃金を請求することはできません。これが代休との違いです。