小千谷の社会保険労務士

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違うの?「試みの使用期間」と「試用期間」

一般的に試用期間といっても「試みの使用期間」と「試用期間」は性質・内容が違います。

「試みの使用期間」は労働基準法で規定されているもので、入社してから14日間は、解雇予告期間を設けず即時解雇できる決まりのことです。この14日間は労働日数ではなく、歴日数です。入社後14日以内で解雇する場合は、予告期間や予告手当は不要です。

※だからと言って合理的理由なく解雇できるわけではありません。

他方、「試用期間」は会社が任意に設けるもので、見習期間や研修期間などと呼ばれています。その長さも1カ月間だったり3か月間だったり1年間という会社もあります。
 「試用期間」は解約権留保付き契約期間と考えられています。解約権の留保とは、この期間の雇用契約については会社側に解約権が留保されているという意味です。
 しかし、この「解約権留保」を過信しすぎるのは問題です。解約権を留保しているからといって、いつでも解約権を行使できる(解雇できる)かのような感覚は危険です。解約権を留保しているというのは、あくまで正社員を解雇するときに比べて少しだけ要件が緩やか、という意味にすぎないと捉えておくべきです。もっとも試用期間中の解雇について、就業規則に明記されていなければならないのは言うまでもありません。

任意に設定できる「試用期間」を有効に活用するのが人事労務管理上のポイントになります。正規社員として採用する前に、この会社でうまくやっていけるだろうか、 ということを会社と労働者の両者がお互いに考え判断する期間として試用期間があります。「試用期間」は会社のためにだけあるものではなく、労働者が会社を見極める期間でもあるわけです。

そこで「試用期間」の有効活用のポイント

  1. 試用期間の初日(つまり雇入れ日)に会社の方針や人事考課(本採用)の基準を伝える
    …労働者が試用期間中に目指すべきスキル・マインド等を明確にします。
  2. 試用期間が満了し採用するときはしっかりと本採用の通知を行う
    …試用期間を形骸化させない工夫です。

試用期間を3ヶ月ほどにしておいて、試用期間満了後、正規社員としての採用にもう少し判断期間がほしいという場合については、試用期間の延長(6か月)という方法も効果的です。逆に優秀な人が入社した場合などは、(早く本採用したいので)試用期間を短くする(1か月)といった人事労務管理も効果的です。
 ただし、あまりに長い「試用期間」を設けるのは労務管理上好ましくありません。特別な仕事でもないのに使用期間を長くすることは合理的な理由が見当たりませんし、能力や適性をチェックするのには長くても6か月もあれば十分だからです。仕事の内容に応じて適度な長さを設定することが大切です。

「試用期間」中は社会保険や雇用保険に加入させなくてもよいと考えられがちですが、それは基本的には間違いです。技術的には加入させないことも可能ですが、「働き始めた日」から加入させるのが原則です。しかし、「試用期間」中と本採用後の労働条件(給与)は同じである必要はありません。「月給○○万円。ただし試用期間中は時給950円とする」「(会社独自の)○○手当は本採用後から支給する」という労務管理は、労働者に会社への帰属意識と本採用されたいというモチベーションを与えます(求人時に提示しておく必要があります)。

採用面接では、その人物はなかなかわかるものではありません。選んでいる余裕も時間もなく、とりあえず勤務してもらうというのが実状ではないでしょうか?
 だからこそ「試用期間」を有効に使うことが重要です。

※上記の多くは思いつきでするものではなく、就業規則や雇用契約書等に書かれていなければなりません。就業規則等の社内規定の作成は、お知り合いの社会保険労務士へご相談ください。

※「試用期間」中に本採用を断念する場合においては、手続き上、会社側都合の退職として取り扱われるケースがあることに注意が必要です。